自主製作映画「杜人(もりびと)」とそれに沿ったワークショップに参加してきた!②ワークショップ編

今回は前回記事の続きです!前回の記事「①映画鑑賞編」はコチラから!

土地の再生 水脈整備ワークショップ?

自主製作映画「杜人」という映画に何となくの流れでであったさとあやは、映画を観る前に、映画に沿ったワークショップにも同時に申し込んだのであった。

こちらが映画「杜人」のフライヤー

ワークショップは3日間。

ワークショップ名は「土地の再生 水脈整備ワークショップ」である。

映画を観る前は「なんじゃそりゃ。チンプンカンプンじゃ。(・∀・)」だったのだけど、約1時間半の映画を観るだけで「なんていいワークショップに予約したんだろう!明日が楽しみ!」と思うのである。映画(動画と音)というのは影響力がの浸透早くそして深い。目を開けて座っていればシャワーのようにその世界に連れて行ってくれて、さとあやのようなチンプンカンプンもちょっと森のことを考えたい!という人に変身させてしまうのだ。魔法だ、魔法。

いざワークショップ1日目

ワークショップは映画への熱が冷めきるわけもない翌日朝9時。さとあやは同じく修善寺のTuttycafeに居た。だが今回は裏庭が会場だ。

裏庭のすぐそこは竹林であり傾斜地。定員10名に対して初日は9人。昨日映画の冒頭であいさつをした、まさに木のように静かだけど、しかし情熱的な熱い高橋洋平さんがワークショップの先生となります。(以下洋平さん)

洋平さんがどんどん道具を敷地内に並べて準備をしているのだけど、森から遠い人生のさとあやはこれを見るだけですごいなぁとなっていました。見たことありそうな道具ではあるけど、よくよく見ると知らない形の道具たち。

一番不思議な道具はスコップがハサミみたいになっているやつ。「ダブルスコップ」といって穴を掘るための道具らしい。

ワンちゃんの一番側にある道具が「ダブルスコップ」!

最初は円になって自己紹介から始まった。昨日の映画の挨拶の時よりも柔らかい表情の洋平さんは今日は背中に若葉が生えているように見えた。参加者は様々だったけれど20代から50代までで、富士市や河津、近隣の方、さとあやのように1人で参加もいればご夫婦で、友人でという方もいた。このご夫婦の参加の方は、翌日はお母さまと息子さんで参加されていて感動した!

映画の謳い文句にもあるのだが「人間よりも自然に従う風変わりな造園家」が取り組む今回のワークショップは、一つ家主さんから強い要望を寄せられている。それは「蚊を減らしたい」ということだった!!

ここTuttycafeは可愛らしい古民家なのだが周りは竹林に囲まれていて、5月から12月まで実に7か月間蚊に悩まされるらしい。その量は半端じゃなくて、参加していた人は「20か所刺されたことあるよ」と言っていた。さとあやは蚊であっても2週間以上腫れてしまうから20か所なんて聞いてぞっとしてしまった。。。

そんなときにキャンプ場をやっているお友達から“水脈整備”をやったところキャンプ場から劇的に蚊が減ったという話を聞き、諦めていたTuttycafeの庭の活用をやってみようともう一度立ち上がったのだった!

洋平さん曰く蚊がいなくなるということではなくて、蚊がいるべき場所に留まるようになり、人間の生活圏内に入ってこなくなるということはあり得ると思いますと言っていた。見えない地中に水が溜まる場所があればそこに蚊は喜んで住み着くけれど、水脈整備をすることで水が循環するようになると蚊の生活圏内が移動していくという、説明を聞けばそうだろうなと思うことだった。

ちなみに洋平さんのおうちはナメクジがたくさんいたようだが水脈整備することで全く見なくなったということだった。

ナメクジならまだ理解しやすいけど、蚊は飛んでどこにでも移動するからなぁ…と蚊に対してめちゃくちゃ恐れおののいているさとあやは期待と諦めを持って道具を腰に括り付けたのであった。

竹林に足を踏み入れる

竹林に意識を持って入ったのは竹の子掘り以外では初めてだ。急斜面を腰が引けながら降りて、竹林の中でのワークショップがはじまった。

「人間よりも自然に従う風変わりな造園家」はまず、自然の声を聞く。こんな書き方するとスピリチュアル的とか信仰?みたいに思う人もいるかもしれないが、まったくそんな感じではない。

竹林の中に立った時に、「気持ちがいいな」という景色や風の通り道を誰もがそれぞれの方向に感じる。自分の居心地のいい方向に身体を向けて目をつむって風や空気を感じてみる。確かに普段は視界をオフにしたり音を聴こうとする時間を意識的に作ったり、野山での仕事でない限りは、思いつきもしない行動だ。

目をつむって数秒すると「足の下にある水の流れや木の根を感じてみてください」というような言葉があり、「ああそっか。こんな当たり前のことも気づいてなかったわ」と想いながら、見えもしない木々の根を見て感じて、あっという間にこの土地に愛着と経緯が湧く1分間だ。

確かにあまりに人間本位の環境に身を置きすぎたさとあやは、皮膚の表面から思考にならない思考のレベルまで人間に合わせた、いや、寄りすぎた世界に物質的にも精神的にも慣れ親しんでいるのだ。この人間に寄りすぎた世界を自分の中に感じながら少しずつでも自然のほうに歩み寄っていきたいと、自らの想いを再認識した。言うは易しであって、1分間が終わり目をあければそこには竹があり、土があり、体力勝負が待っていることを知っている(笑)( ´_ゝ`)

こういう「手間」と「わざわざ」の生活を取り入れたいという想いがあるのだ、やるしかないぞさとあや。(笑)

さて、この1分間ワークをやった目の前には、山の傾斜地で、360度竹の景色。だが目の前には黄土色の土地がドン!とあって、よく見ると地中に埋まっている木の根っこや竹の根っこが土に食い込んでそこにあった。

このような木の根っこが見えてしまっている断層的な土は東京でも伊豆でも珍しくない。

だが今回その様相になっている意味をはじめて考えるきっかけとなる。

洋平さんはこの剥き出しになっている土を触る。この写真で言えば右上はサラサラの土であることがわかる。サラサラというよりもカラカラだ。木の根っこがあり、竹の根っこが見えているのに、カラカラなことに違和感を覚えた。足元の土はカラカラではない。しっとりしている。さして距離がないのに、どうして目の前の土には水分量がこれほどまでにないの?

山の水がなんらかの理由で上手に通らなくなってしまったので、ここから水を吐き出すことになり土が流れ出てしまっていると考えられる。今は竹の根や木の根で支えられているが、時間が経てば土砂崩れの可能性が見える。

これが水脈が通ってないことの証だってことか…と映画とリンクし始める。私は映画とワークショップを通して、山や土地の水脈と言うのは、人間でいう血管っぽいなと理解した。私で言えば冷え性で、手足が冷えてしまっているときは、毛細血管の存在を感じない(笑)たのむ血液を運んでくれ!と思うが自動的には運んでくれない。

お湯で手足を温めたり、温かいものを身体に取り入れたり、マッサージしたりして、毛細血管と太い血管に頑張ってもらうのだ。はたまたリンパ腺も水脈に近いかもしれない。リンパが滞るとむくんだり、発汗が悪くなったり、肌艶が悪くなったりするけど、水脈も滞ると「グライ土壌」という土になる。このグライ土壌は空気や水が循環しない土の層で、自然の構成員であるバクテリアや小動物に影響を与え、全国に広がっているという。

話しは戻るが目の前のカラカラの土は、毛細血管が通っていない状態になっている。雨が降るとそれでも水はどこかで抜ける必要あるので、通りやすいところに流れて行って、ある日ドカンと吐き出すように土が崩落。人間にとっては「なんか突然土砂崩れが起きた!」と驚くのだが、目に見えないだけであって、そこには水脈の「脈」と同じく「脈絡」があるのだ。

人は昔山に入り仕事をし、材を運び、未来のために木々を植え、整備をし、それが生業であり、長いスパンでのルーティンだった。自分のルーティンのみならず100年先を考えたルーティンだ。ところが資本主義の都会主義がスタンダードになり、その構造が崩れてどれくらい経つだろうか。今や仕事場だった山どころか、民家がある場所にまで影響はわかりやすいレベルで及ぶようになっている。森から離れた人生だったさとあやでさえもワークショップはじまって30分で目からうろこなのだった。

ワークショップ1日目:竹を運ぶ・竹炭ともみ殻燻炭をつくる・細めの水脈整備

竹林に風が通るように適度に切り出し、平地へ運び竹炭ともみ殻燻炭を平地でつくる。

竹林の急斜面からみんなで一生懸命運んだ。
奥では竹炭を作り手前ではもみ殻燻炭をつくる。
もみ殻燻炭はスコップでかき混ぜながらゆっくり燻製に。

平地から竹林への小道の際にシャベル(よりも少し細身の移植ごて)で小さな水脈をつくる。

ここからは力仕事だ。伊豆に来てから車ばかりのさとあやにはかなりこたえる作業だが楽しいので問題なし。

小さな小道のはじっこにシャベルで10センチくらいの溝を掘っていく。優しいなと思う表現がこの時にあって、「掘り返した土はそのまま横に置きます。そこにも微生物がいますから」的な言い回しがありました。またここでも「あ、そうか」と足元に、シャベルの先に、生き物がいることに気づきをもらうのでした(目に見えないけど)。

溝を掘っていくと、途中簡単に深く掘れるところが顔を出します。ここも優しさを感じるのですが、深く掘れるところはそのまま深く掘り、それ以上掘れないところはそのままに、曲がる必要があるところは溝を曲げて、自然に従い水脈を整備していきます。最後その溝に枯れ葉をかぶせるのですが、風が通った後の落ち葉を再現(シャベルで八の字を描きながら土にかぶせます)しこの作業は終了です。

そして運び出した竹と、もらってきたもみ殻を炭にします。

さとあやは小さなのこぎりと小さなチェーンソーデビューを果たしました!祝!

落ち葉であれ、竹であれ、ゴミにも出来るし資源にも出来る。何か人間が忘れてしまった大事なことを体中で感じた1日でした。にしても自分が燻されてくさいぜ。(笑)

ワークショップ2日目:太めの水脈整備

2日目のワークショップは1週間後に行われました。

1日目と違った大変さがある日です。

運ぶパワーではなく、本日は掘るパワーが必要となる日です!

Tuttycafeの裏庭が会場!

1日目同様目を閉じて自然を感じます。1日目のワークショップの成果だと思うのですが、切り出した竹林と小さな水脈整備のおかげが風の通りがよく感じて、空気のよどみがなくなっていました。そっかーこういうことかー。こうやって蚊は住みよい場所に移動していくかもなとイメージが湧いてきました。

洋平さんがここに水脈を掘るよというのをだいたいスコップで線を引いてくれます。そのなんとなくの線に沿って50センチくらいの溝を掘ります。1日目は5センチとか10センチの溝だったから全然違う深さです。ということでまずはスコップとか鍬の登場なのです!ここでも大事なのは微生物の住処を掘っていきますので、ティラミスケーキを掘り出すように、スコップで切込みを入れて土を四角く取り出します。そのまま微生物が住める環境として、横に置いておきます。これは最後に土手的役割を果たします。

スコップで切れ目を四角く入れて…
ティラミスのように切り出して端に置いておきます。
そして水脈の土台をつくります。(棒のように見えるのは竹の根っこです。このように残しておいてもいいし作業的に不都合であれば切っても良い)

50センチくらいの溝の途中で、適度な間隔でダブルスコップを使って深い穴を掘ります。この穴には竹や笹や小枝をぎゅうぎゅうに詰めて、空気や水が地中に浸透していくような仕掛けを作ります。

みんなで水脈整備!!

またこの穴以外の溝はなるべくU字溝のように角をつくり、その上で寝かせる形でやはり竹や笹や小枝をぎゅうぎゅうに詰めて自然の水路をつくるのです。

穴に竹を差して、地面の高さでのこぎりで切ります。
ヒビを入れた竹を穴に差し込み
ここに枝や笹や炭をぎゅうぎゅうにいれていきます。
真っすぐな水路である必要はなく環境にあった曲がり方と深さを作っていく。壁面に炭をぶつけながら付着させています。
縦穴が終われば次は横の水路にぎゅうぎゅうにこの土地で採れた有機物を詰めていきます。
押し込めない!というところまでぎゅうぎゅうに。

1日目に作った竹炭と燻炭も振りかけ最後は木の葉を風が通ったような形に覆いかぶせて完成となります。これにより菌糸が育ちその周りに様々な微生物が住み着き、土壌を改善させていくのです。明日これを見たところで、何の変化も見られないように見える。自然のシステムを使うということはファストフード的なものではないのだなと思い知らされます。

掘った土もなるべく微生物の住処を壊さないように地面に戻していきます。

これが無機物で庭を整備するとなれば、お金を出して、埋め込んで、「はい!水が流れるようになりましたね!」です。今がよければ良い、生きているうちが良ければよい、ということでは、今回のワークショップをやろうとは思えない程の時間軸です。

木の葉は風が通ったようにかぶせる、それがなんだが優しいです。

めっちゃくちゃ疲れるけど何とも言えない達成感です。人間がやり遂げた!という達成感ではなく、自然のシステムに貢献した!という気持ちでした。

ワークショップ3日目:太めの水脈整備

基本的に2日目の内容と同じで、同じ敷地の違う場所に水脈を作ります。

作業をした後のみんなで食べる美味しい食事。

3日間のお昼タイムはTuttycafeさんがつくるおにぎりとお味噌汁に癒されました✨

よいこ共和国さんも出店してくれていました!
おにぎりめっちゃ美味しい!赤茶色のおにぎりは酵素玄米にぎり。

これを天城湯ヶ島でもやりたい

個人的にずっと気になっていることがありました。私の恋した天城湯ヶ島地区は山に囲まれた地域で、自然と切っても切り離せない場所にあるのです。自己紹介に書いている通り、さとあやは都会でずっと暮らしてきて、大の虫嫌いで、蚊に刺されても2週間は腫れているという毒性に弱めの人です。それでも田んぼや畑を見れば感動し、土に触りたいと思い、汗を流している人を見ると尊敬と羨ましさがありました。

これでも1年半前の私が今のさとあやを見たら「え!すごい虫大丈夫になってない?!」と見えるくらい、虫と出会った時に叫んだり、走り回ったり、飛び上がったりということはなくなりました(笑)(自分の中ではあまり進歩したように感じてないけど人にはそう言われる!)

そんな私でもコミットはあって、私はもっと自然のシステムを知りたいし、自分がその一員となりたいので、この上映会とワークショップをここ天城湯ヶ島で展開していきたいなと強く想うのでした。たくさんの調整はあるだろうけれど共感者がいっぱいいるので楽しみにしていてください!

投稿者プロフィール

さとあや
さとあや
「すべての人に、ふるさとを。」
東京生まれ、東京育ち。楽天に入社し後半の5年間は「楽天トラベル」に所属。伊豆を担当した中でも「天城湯ヶ島」というエリアに恋をした人。東京からの移住に取り組むこと半年、伊豆市地域おこし協力隊に合格。そして7か月目ついに移住できる古民家に出会いました。天城湯ヶ島への想いと古民家プロジェクトを中心に綴ります。