GAKKO PROJECT 03 修善寺長倉書店 自然と文化の伊豆半島 学びなおしの旅 梶井基次郎 アーツカウンシルしずおか

修善寺駅前の長倉書店さん

長倉書店さんは地元で知らない人はいないであろう、修善寺駅前にある町の本屋さん。ふつーの町の本屋さんに一瞬は見えますが、入ってみたら「何かちがう」ということが肌でわかる。(2016年にはサントムーン柿田川にもご出店されています!)

私はそこまで本を読む人ではないけど、本屋さんは好き。店内を歩いているうちに、「あれもキニナル、これもキニナル」と次から次へと本を手に取ってパラパラ見てしまい、いつの間にか「どの本にしようかな」と買うことだけは心に決まった状態で、本棚の間を何度も何度もうろつくことがある。長倉書店さんはそういう本屋さんのうちのひとつだ。

長倉書店さんに初めて入ったのは今から10年ほど前だと思うが、ようやく店主の長倉さんに挨拶したのが最近のことだった。その時に紹介されたのがこの「アーツカウンシルしずおか ARTS COUNCIL SHIZUOKA」という静岡県の文化を推奨する取り組みの一環であるプロジェクトだった。

GAKKO PROJECTはどっかで1度目にしたことは覚えていて、興味はあった。私の住んでいる天城湯ヶ島地区と言えば多くの文豪が過ごした町で、井上靖・川端康成・梶井基次郎、この3人の名前はよく耳にする。耳にしたときにとんでもない熱量で語るおじちゃんたちが多い地域なので、自分は文章は好きだけど、そこまで研究者的に語る流れには毛頭乗れないし(さとあやが薄っぺらすぎる)、怖気づいてしまうのであった。このプロジェクトに対しても「そんな感じかもしれない」と想像しすぐにはエントリーできなかった。

ところが、長倉さんから改めてご紹介されたら、「私みたいな文学ライト層」も行っていいのかもしれない!と思えて、速攻でエントリーさせてもらった。改めて誰から紹介されるかって大事である。

梶井基次郎の文章 「檸檬」以来の「闇の絵巻」

梶井基次郎は「檸檬」しか読んだことがなかった。多くの方と同じく、高校の教科書で。

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しかもしかも、あの文章の意味が当時はまったく理解できなかった。

なぜ・・・檸檬を・・・置いてきた・・・?

それでも「かじいもとじろう」という音と「梶井基次郎」なんともかっちょいい漢字バランスの5文字と、「檸檬」という到底書けそうにない漢字なのに、スーパーに売られている身近な果物ということで、忘れられない作品だった。

長倉さんから「予習として短編集にある「闇の絵巻」を読むといいかもよ」と言われて早速湯ヶ島の図書館に行って読んだ。想像の10倍面白かった。梶井基次郎ってこんな素敵な文章書くのかー。しかもこの闇の絵巻の舞台は、歩いてすぐそこにある。そんな予習をして当日を迎えたのであった。

GAKKO PROJECT03 梶井基次郎の<耳> 静岡県立大学 細川光洋教授

会場は長倉書店の2階にオープンしたカフェスペース。イベントは2023年8月26日(土)に行われたが、この日がこのスペースのこけら落としというめでたい日!

本棚にはテーマごとに面ざし(表紙が飾られてる陳列方法)されていて、表紙がその位置にあることによりメッセージを語りかけてきて、ついつい手に取って立ち読みしたくなる素敵な空間になっている。(この写真は、GAKKOPJT当日のお写真ではありません)

真ん中に大きなテーブル、プロジェクターがおかれ、周りを囲む形で二重に席が配置された。今回のこの講座の主催は伊東にある出版社、子鹿社の田邊詩野さん。そして梶井基次郎について、様々な読み解きを提供してくれるのが静岡県立大学の細川光洋先生であった。

どう見ても文学好きな人たちばっかりじゃない?!にしか見えない中、講座は始まった。

控え目に言って最高に楽しい“授業”だった。そう、大人の授業だ。こういう先生に学生時代に出会うことが出来た子供は幸せだなと思う。国語を愛する確率があがるし、人生を豊かにするきっかけをくれそうだ。

梶井基次郎の文章を読み解く題材として

  • 器楽的幻覚
  • 筧の話
  • 闇の絵巻

の3つの文章を使った。単純に単発の文章としても面白いけど、梶井基次郎がどこで(東京か湯ヶ島)、どんな精神状態、身体状態だったのかなどを想って読むと、作品によっての深刻さの度合いや、希望の量を理解することが出来るのがまた面白い。

梶井基次郎の文章に出てくるクラシックも実際に聴いたりして、文章と音楽を重ねて散歩してるような気分になった。全く素人的なコメントをすれば「言語化うまいな~」であった。

私は湯ヶ島の水音を常に聞ける家に住んでいるので、梶井基次郎の気持ちが少しわかる気がした。私は湯ヶ島を好きな理由を言語化できなくて今に至るのだけど、言語化できない魅力が詰まった土地、という言語化を、梶井基次郎も井上靖もペンという彫刻刀で繊細に大胆に作品を作ってきたんだなとしみじみ思う素晴らしい1日となりました。

開催してくださった皆様、ありがとうございました!!
第四弾も盛況をお祈りしております!

投稿者プロフィール

さとあや
さとあや
「すべての人に、ふるさとを。」
東京生まれ、東京育ち。楽天に入社し後半の5年間は「楽天トラベル」に所属。伊豆を担当した中でも「天城湯ヶ島」というエリアに恋をした人。東京からの移住に取り組むこと半年、伊豆市地域おこし協力隊に合格。そして7か月目ついに移住できる古民家に出会いました。天城湯ヶ島への想いと古民家プロジェクトを中心に綴ります。